アラサーの勝手気ままな何か

2016/07/08 本日は妄想をお届けします

「企画、ボツになっちゃったなー…」

喫煙室の壁に寄りかかりながら1人タバコを燻らしていた。

あれだけの時間をかけて作ったこのプレゼン資料は、今現在21時過ぎを持ってただの紙束と化した。

普段の私だったらこうも悩まない。

私の努力が空回りしただけなのならそれはそれで構わないのだ。

こんなことはよくある話だし、次にやるべきことは山ほどある。

今日終わらせる必要のあるやることをやって、明日に備えなければならないということはわかっていても中々デスクに戻ろうとはできないでいた。

「私一人が悪いで済めば困ったりはしないんだけど」

そう、今回のこの資料は私ひとりの努力で作ったものではなかった。

入社2年目を迎えた私には今年から部下が配属されていた。

素直が取り柄の歳下の男の子。

そんな彼の協力を経て作成した手前、結果を報告する義務が私にはある。

会議が長くなりそうなことをふまえて先に帰ってくれて構わないと伝えてはいたものの、おそらく彼はまだ残っているに違いない。

まだ短い付き合いだがそういう子犬のようなフシが彼にはある。

「ここでウダウダしていても仕方ないか」

どれくらいの時間を過ごしたかわからないが、私はようやくデスクへと戻った。

 

「先輩!お疲れ様ですっ」

デスクに戻ってきた私を見つけると、彼は一目散に跳んできた。

「どうでした?企画の方は」

私に喋る隙を与えずにストレートに聞いてくるあたり、彼の性格が伝わる。

「ダメだった。他の人の案でいくみたい」

だから私も素直にそう事実を伝えた。

「そうですか…」

今回の企画作りは彼自身の単独企画というわけではないが、入社以来やってきた簡単な事務仕事やお使いのようなものとは違って本格的な仕事だ。

落胆するほどに思いが詰まっていても不思議ではないだろう。

顔を見ればすぐに何を考えているかわかってしまうという彼の性格は、ここまでの彼とのコミュニケーションで助かる場面も多かったが今回はそれが裏目に出ている。

「ゴメンね、頑張ってくれたのに。私の力不足だった」

「そんなことないですよ!先輩は悪くないです。悪いとしたら僕の方です」

そんなことはない。

彼は夜遅くまで手伝ってくれていたし、手をぬくようなことをしてはいない。

悪かったとするなら、全体の方向性を決めた私か、この企画を蹴った上のせいである。

彼に非があるなんてことは誰が相手だろうと私が言わせない。

まぁそんな権限私にはないんだけども。

「それはないよ。君言ってたじゃない。私が会議に行く前に『いっぱい頑張ったんだから大丈夫です!』って。なら君は悪くないよ。もしなにか問題があったのだとしたらそれは私か、これを蹴った上の人間だよ」

「その頑張ったは先輩の方に決まってるじゃないですか!」

「なら違う企画を選んだ上の人達が悪いわね」

「先輩、怖いもの知らずですね」

「事実だもの」

そう言って、私は笑ってみせた。

言ったとおり彼は悪くない。

当初の想像以上に彼はうまくやってくれた。

そして私もまぁそれなりに頑張っていたと思う。

彼に感化されたわけではないけれど、恥ずかしくないものを作ったという自負がある。

なら、残る原因はただ一つ。

上のお偉いさんが悪いということになる。

そういうことにしておこうではないか。

「そうだ先輩。まだ残って仕事していくんですよね」

「そうだよ。まだ後処理とか残ってるし」

「ならコーヒー淹れてきますよ。なんだか待ってたら喉乾いちゃったんで」

「だから先に帰っていいって伝えていたのに。どうしてこんな時間まで残ってるの?」

「いや、頑張って闘ってる先輩置いて帰れないですよ」

「闘うって…」

「まぁ、あとこうして先輩と話していたいなって思った…からとか?」

「そこをはっきり言い切らず疑問形で答えちゃうあたりズルいよね君」

「なんですかズルいって」

なんて言い残しながら彼はコーヒーを淹れに給湯室へと去っていった。

そんな彼のコーヒーは少々甘く、なんとなく彼のようだった。

 

ってなことを2~3日前から考えていました

もはや日記でもなんでもないとかいわないでネ